名護東道路延伸 その0.経済競争の激化と子々孫々続くリスクとコスト
名護東道路延伸 その1.お金は落ちてこない
名護東道路延伸 その2.環境の劣化、災害リスク
名護東道路延伸 その3.自然は金の延べ棒 おしまいに

新しい道がどういったルートかはわかりませんが、謝花~豊原に新しく道ができているので、そこに繋げるならカルスト周辺を通過することになるかもしれません。今帰仁城へのアクセスも良くなり、お目当ての観光地から「中南部へすぐ帰れる道」が出来上がります。
とにかく一番お伝えしたいのは、森の荒廃と土砂崩れのリスクです。
最近、ニュース番組では線状降水帯による被害として土砂災害が度々報道されます。確かに異常気象もあるかもしれませんが、今まで山や森に対してかけてきた負担がいま出始めてる部分もあると思います。個人的には山や森も川も、もう機能しなくなっているという点でクマの出没など動物の異常行動も共通しているのではないかと思っています。
森を破壊し道路や重量物、トンネルや擁壁などを作るとどうなるのか、画像にあげた『土中環境』(高田宏臣)を、皆さんに是非読んでいただけたらと思います。
特に建設課や土建業、森林保全や土砂崩れ・土石流に興味がある方などに絶対読んでいただきたいと思っています。キーワードは「通気浸透水脈」です。
・ヒトの環境の変化
カルスト周辺でカフェや宿泊施設をやっているところは閑静な隠れ家として、自然を売りにしているのではないでしょうか。なかには、すぐ目の前に道路が通る宿もあるかもしれません。その場合デメリットしかないはずです、最悪の場合道路は目の前だけどアクセスは悪いということも起こりえます。
そして、今までの449号線や84号線で商売をしてきた住民にとっては客足が遠のくリスクも発生します。個人の経済力ではコンビニのようにさっさと引き上げて新しい場所に店舗を出すなんてこともできません。
プリントを見ると、渋滞の解消といったようなことが書かれています。確かに名護以南は深刻かもしれませんが本部町内で激しい渋滞はほとんど見たことがありません。花火大会のときは多少渋滞しますが、そのために何百億円もかけて道路を作っちゃいますか、どんだけ花火好きなのでしょうか、、。
そんなに渋滞が深刻ならコロナのときのように花火大会をやめれば解決です。
むしろ今より更に交通量が減れば、オートバイで爆音を鳴らして楽しむ人にとっては、快適な道路で爆音遊びにも精がでるかもしれません。
宿泊されたお客さんは嫌な思い出は作りたくないので、ニコニコして帰って行っても、滞在中に減点ポイントがあったらリピートはないでしょう。
他にも環境が変わってみないとわからない生活環境の変化が少なからずあるはずです。
例えば、フクギ並木で有名な備瀬の方は、「のぞき趣味ということではないと思うが、風を通すために窓を開けていると住まいをジロジロ見られて気分が悪い」とこぼしていました。
そして、備瀬にはパワースポットと言われて有名になった場所がありましたが、神聖な拝所がゴミだらけになってしまい閉鎖されたことがありました。
今まで通り普通に暮らしていても、メディアや宣伝などで環境が変わり不快な思いをすることも起きます。
単に観光客が増えて儲かれば良い、、という話では済まなそうです。
・値上がりのリスク
町の人口が増え経済発展することがメリットばかりとは限りません。
観光客が増えたり、ホテルの稼働率が上がると、水道やごみ処理の料金は上がる可能性も出てきます。
観光業の従業員などで人口が増え本部町の経済が上向きになれば、家賃や固定資産税も上向きになりそうです。
町の観光化が進めばスーパーなども強気の観光地価格になるかもしれません。
もし道路が増えても、車が増えないなら道路建設そのものが大失敗で、単なる巨大な負の遺産となり、二度と元には戻せないまま管理に税金が漏れ続けます。
法人税下げたら消費税増税、震災復興で増税、年金が足りないなら増税、、、いま日本中の道路にガタが来ていますので道路増税だってやるかもしれません。増税分がキチンと使われるならまだマシですが、、どうでしょうか、、、。
儲かっても儲からなくても、良い結果にはならなそうな気がします。
・災害リスク
何かあったとき、被害は町にふりかかるというリスクが考えられます。
地中の水脈の変化による森林の荒廃、土砂の流亡、ガケ崩れ、台風による倒木。除草剤の違反散布、観光で訪れた慣れないドライバーの起こす事故に巻き込まれる、その他できてみないと分からない問題もあると思います。
メリットは道路で儲かる人たちが沢山教えてくれるけど、出来てから問題が持ち上がり、もし何か起きても「想定外」「相関関係は認められない」という言葉を使われたら、保証など期待できません。
例えば新道路を作って、それが壊れて他に被害が及べば損害賠償の対象なると思いますが、直接隣接していない近隣の町道で新道路建設を境に土砂崩れが連発しても、「相関関係は認められない」となれば補修の負担は町、私有地の場合自費になると思います。どれくらいお金掛かるのでしょうか、、。
・工事期間や完成後の雑草の管理は除草剤が使われる
いつもお伝えしていますが、住宅地通知や除草剤散布マニュアルが守られていないケースが多いので、新道路近辺の方は気を付けてください。かなりのスピードで自動車が通過する場所で散布機を使ったら予想外の方向へ拡散し遠くまで飛散するはずです。
洗剤や香水の匂いに敏感な方や、元々化学物質に弱い方は気を付けてください。まず工事の下準備で除草剤散布すると思いますので、ルート決定次第、県の営農支援課に相談するとか、該当の事務所に連絡してその付近の散布はやめてもらうよう要請するなりした方が良いです。健康にかかわる重要な問題な上、被害に遭われても実証が難しく泣き寝入りはほぼ決定なので、今後の動きに注意してください。
・災害時に役に立つ?
プリントには、以前台風被害で道路が寸断された事例が書かれていますが、新しく作った道は台風被害を受けない保証はありません。
「人工物が増えれば災害時に、より多くの損害が出る」の間違いではないでしょうか?むしろ新たな開発により、ガケ崩れを誘発させることも考えられます。
災害のことを考えるなら今ある道路の補修をしたり、周辺のガケ崩れを防止するために通気性のよい石積みにしたり、木を生やして、土中の水分と空気のバランスを整えるべきです。この辺の災害リスクの費用は国道とは関連付けられないと思うので、県や町が負担しなければなりません。
高所の重量物やガケ下のコンクリート擁壁は、一時的に上等に見えても長期的には崩壊のリスクが高まります。今の子供たちが本部町を引っ張っていく頃には老朽化に伴いいろいろ問題が生じて補修工事に莫大な予算と時間がかかりそうです。
地面は固い土台のように見えますが、微妙な水分バランスで保たれています。
小麦粉に例えると分かりやすいかもしれません。そのままならサラサラと崩れてしまいます、逆に水が多ければドロドロになって固まってくれません。全体に適度に水分が保たれているから形を保っていられるのです。雨が降っても風が吹いてもその形を維持する役目を果たしているのが森林です。木の幹は土中と空をつなぐパイプで、根っこは土中の水分と空気、微生物のバランスを整えます。葉っぱは地表が乾かないように日陰を作り、強風も和らげてくれます。
いまの人間の技術ではこれを再現できないので、『土中環境』を読んで、しっかり木の育つ環境を整え地球とうまく付き合っていくのが、長く生存するための最適解です。
・自然破壊について
・本部・今帰仁にあるカルスト地形はとても貴重なものです。
過去に採掘予定があり町民の反対で中止されましたが、今回の道路建設はそのリベンジマッチに思えてきます。カルストの価値さえ壊してしまえばあとは採掘し放題です。
もしカルストに立派な道を作って連日大型バスやレンタカーが通れば、排気ガスで石灰岩が溶けたりしないのでしょうか、
樹木は排気ガスの影響を強く受けますので、交通量が多いほど=道路を作った効果が高いほど、道路近辺の森林の環境は破壊されます。
森は海の恋人と言うように、森が破壊されれば海もダメになります。
森のヤブ化が進み裸地が増えれば、雨水は地面に浸み込まずに地表を滑り、排気ガスやタイヤクズ、除草剤で汚染された表土もまとめて海に垂れ流します。雨水が浸み込まなければ地下でろ過された奇麗な湧き水も枯渇します。
渡久地周辺の海は今でもだいぶ汚くなっていますが、更に海の汚染が進めば、瀬底島や水納島のサンゴにも影響が出るのではないでしょうか。
美ら海水族館は本部沖の海底から海水をくみ上げているので、本部半島近辺の水質が悪くなれば展示された魚たちの寿命も短くなり、運営も厳しくなりそうな気がします。
高架にしたら、今度は土台部分に重量が集中するので、土中の水脈の流れに異常が起こり土砂災害のリスクが高まります。
もちろんトンネルは地下水脈を直接壊してしまうので、言うまでもありません。
土砂災害は人災です。土砂崩れだけなら自然現象ですが、そこに道路があったり人が住んでいるから災害となり、その原因はたいてい人類の活動により森が荒廃することから始まるようです。道路や高架、トンネルなどの構造物、特に大型の施設や擁壁などの構造物はリスクが高いと言えます。
・希少生物が住んでいます
本部半島にはレッドデータブック(RDB)の絶滅危惧種に該当する生き物がいます。パッと思いつくだけでも何種類もいます。
サシバ(冬季)、サンショウクイ(冬季)、イボイモリ、クロイワトカゲモドキ、キノボリトカゲ、クロイワゼミなど、絶滅危惧Ⅱ類に分類されている生物がいます。
例えばクロイワゼミは世界中探しても、本部半島など一部の地域だけに分布する珍しいセミです。セミは飛べるのでどこへでも行けそうに思う人も多いかもしれませんが、はっきり言って飛行は下手でヒヨドリに空中キャッチされたりするほどです。一生のほとんどを土の中で過ごす土着性の強い昆虫で、分布地域が限定されているのが何よりの証拠です。
絶滅危惧種といっても、お住いの場所によっては案外沢山いて「絶滅危惧だなんて大げさ、、」と思われる方もいるかもしれませんが、例えば鳥類では、Ⅰ類に分類されたら、その後個体数を回復した例はないと言われます、絶滅を待つだけです。
上に挙げたような絶滅危惧種で、いま本部半島で分布を広げつつ増え続けている生物は居ないと思います、良くて現状維持でしょう。
個体数の回復の兆しが見えない現在、まだⅡ類のうちに手を打たなければ、今後、確実に数を減らし、気づいたころには可愛らしいイラストや博物館のはく製だけ、、になっている未来が容易に想像できます。
仮にゲノムを保存して絶滅してしまった生物を、何らかの方法で復活させる技術があったとしても、それはDNA上のことであり、何万年と続けてきた彼らの生態は元通りにはなりません。。
テクノロジーが進歩するほど私たちはそれに目がくらんで、何でもできると思ってしまいます。たしかにデジタルの中でならそうかもしれません、VR技術やAIを駆使すれば、空を飛ぶことも、極地を旅することも、人気者になることも体験できるでしょう。過去の思い出を美しく加工して追体験することで人生そのものを変えてしまうことが可能になる日も来るかもしれません。
しかし、アナログの世界ではそうもいきません、未だに、手や足、目など体を使ってお金を稼いで、命をつなぐことに日々を費やし、人生に失敗しても〔continue〕や〔初期化〕のボタンが表示されるわけではありません。地震や津波が来たら何もかもダメになってしまいます。
アナログの世界で生きている以上、自然の摂理は絶対で、それにそぐわない物を作れば、必ず元に戻そうと力が働きます。
最も分かりやすいのが引力でしょう。引力(自然の摂理)に逆らって、上空に向けて高く石を飛ばせば飛ばすほど、落下するスピード(災害リスク)は加速度的に上昇し、強烈に地面に叩きつけられます。(甚大な被害を引き起こします)
安易に開発して自然を壊してしまえば、必ずツケを払うことになります。しかもそのツケは北部国道事務所ではなく、現地に住んでいる町民が払うことになります。