土に何日残るの? グリホサートによる土壌の汚染1

土に何日残るの? グリホサートによる土壌の汚染1

「除草剤って、あんなに強い雑草が死んでしまうんだから怖い、、、」と感じる方は多いと思います。

しかしホームセンターに行くと、メインの棚に並んでいるラウンドアップマックスロードには「自然物に分解」と書かれています。除草剤を使用される方からしたら、ちゃんとしたお店で売っている商品だし、自然物に分解するから何も心配ない。除草剤が怖いとか感情的になっている人は現代のテクノロジーを解っていない、、、そう思うかもしれません。

歴史上もっと危険な農薬はたくさんあったと思います。
では今の除草剤は安全か?と言われると、法律の問題や企業秘密、様々な毒性を示す報告もあり決して安全と言い切ることはできません。このことについては、過去記事 除草剤は安全? に書きました。
そして、少しずつグリホサート系除草剤の特徴が見えてきており、土壌の汚染の原因になっている報告がありますので、少しまとめてみました。

土に何日残るの?

<ラウンドアップのHP>
散布後も土を悪くする心配はいりません。
雑草の茎葉にかからずに土に落ちた成分は、処理後1時間以内のごく短時間で土の粒子に吸着し、その後微生物により自然物に分解。
約3~21日で半減、やがて消失します。

とあります。
どのような条件で、どんな微生物が分解するのか、「やがて」とはいつなのか気になりますが、警察庁附属機関科学警察研究所の半減期のデータと大きく違っています。

記事最後にリンクを載せましたが、私には専門知識がなく細かく読み込めなかったので大まかな結果だけ書かせていただきます。もし誤りがございましたらご教授願います。
また最新の情報などをご存じでしたら是非お願いいたします。

<科学警察研究所>
条件 非農耕地の土 純水で10倍希釈
(ラウンドアップの正式な希釈は25~100倍、塗布は5~10倍のようです)

結果
・半年以上残る
散布地点の土壌からは半年以上の長期にわたってグリホサート原体を検出可能であることが示された。半減期 夏季90日冬季185日
・土壌表面に残る
20回以上の雨が降っても5センチ下の浸透は1000分の1以下
・遅い生分解
生分解であると考えられていたが、、、夏季においても半減期90日程度と消失速度は緩やかだった。グリホサートの分解物AMPAの生成率は6か月後においても1%程度と微量。


季節で半減期が大きく変動するのは、商品ラベル通り微生物が分解しているのかもしれませんが、半減しても分解物AMPAの生成1%程度とはどういうことでしょうか、気になります。
それにしても半減期の長さは宣伝文句と極端に差があります。
メーカーの実験条件はわかりませんが、私たちが除草剤の散布に気づく場所は住宅や駐車場、道路なので、科学警察研究所のデータを参考にするのが適切だと思います。

そして 木村ー黒田純子 除草剤グリホサート/「ラウンドアップ」のヒトへの発がん性と多様な毒性 によると、グリホサートはカルシウムやマグネシウムなどミネラル分の多い硬水と金属キレート化して、半減するのに数年かかると報告されています。
もしかしたら、科学警察研究所の実験で90日かけても減らなかった半分は、土壌のミネラル分とキレート化してしまっていて、消失までは何年も必要なのかもしれません。

スリランカでは、ヒ素やカドミウムとキレート化すると毒性が上がり、慢性腎臓病を引き起こすとされ、ラウンドアップは禁止(一部禁止?)されているようです。このことは過去記事 ヒジキとグリホサート 除草剤にまつわる に書かせていただきました。

ちなみに、「海と陸の地球化学図」というサイトで調べると、本島中南部にはヒ素とカドミウムの多いところがあります。
As=ヒ素
Cd=カドミウム
特に報告が見られないので、スリランカの濃度ほどではないのかと想像しますが、化学肥料との問題やグリホサートとキレート化した場合の研究がさらに進めば何か解ってくるかもしれません。

また、金属キレート化した薬剤は効き目が落ちるうえ、定期的に除草剤散布をした場所では植物が徐々に耐性を獲得してしまい効果が薄れるらしいので、除草剤使用者がより高い濃度の除草剤を散布をしてしまう可能性もあります。
そう考えると、科学警察研究所の「純水で希釈率10倍」は現実味のある数字かもしれません。

沖縄県の硬水で希釈したラウンドアップを、ミネラル成分の多い本島中部のジャーガル土壌に散布したら、半減・消失まで何日かかるのか、ヒ素やカドミウムの毒性はどれ位上がるのか?沖縄県警科学捜査研究所のみなさま、データとってみませんか?

というわけで
グリホサートは生分解が遅く、表土に長期間残留するようです。

2020/10/16加筆
実験は、植物のない植木鉢に散布した科学警察研究所のものですが、グリホサート系除草剤の特性は成分が葉から吸収され根まで届いて枯れるので、現実には実験よりもはるかに早く地中に到達する可能性が高いと思いました。
特に、クワやギンネム、ナガバハリフタバムグラなど根の深い植物の場合は、土中まで容易に成分が到達する可能性は高いと思います。雑草の大きく育った場所に除草剤を使うと地中深く成分が蓄積し、大きくなる前に頻繁に散布している場所ほど地表に蓄積していると予想しています。


しばらくすると草が生えてくるから成分がなくなったと思うかもしれませんが、表土が汚れていても葉っぱに薬剤が触れなければ、枯れません。傾斜地では表土が雨で流れてしまえば残留はなくなりますが、土を流されたほうはたまりません。たとえ半減したとしてもまだ半分残ったグリホサートがいつ分解されるかは分かりません。
そして、冬枯れがない沖縄県では除草剤を年に何度も散布しますので、大量に蓄積することは容易に想像できます。

表土は天候の影響を受けやすいので、強風で舞い上がったり、雨で流されます。特に小さいお子様をお連れの場合は、散布履歴のある近辺は用心したほうが良いかもしれません。
しかも、ここで触れているのはグリホサートの残留だけです。企業秘密の添加剤などを考えると、一層の注意が必要かと思われます。

ラウンドアップが発売されて46年が経つそうですが、グリホサート系除草剤の安全性や土壌の汚染など、まだまだ研究が必要なようです。

この続き、
病原菌の増殖 グリホサートによる土壌の汚染2
を書いていますが、調べることが多くもう少し後になるかもしれません。

***2021/6/21追記****
申し訳ございません。リンクを貼り忘れていました。
2020/10/19 アップロード
病原菌の増殖アスペルギルス属 グリホサートによる土壌の汚染2
https://josouzaigoenryokudasai.ti-da.net/e11710952.html
病原菌の増殖フザリウム属 グリホサートによる土壌の汚染3
はとてもとても遅れてしまっています、期待する方もないと思いますが土壌汚染シリーズはとりあえず3でおしまいなので頑張ってまいりたいと思います。
********


参考

科学警察研究所 PDF 7ページ
土壌中におけるグリホサートおよびグルホシネートの長期的な分解および拡散
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jafst/25/1/25_762/_pdf

木村ー黒田純子 PDF 12ページ
除草剤グリホサート/「ラウンドアップ」のヒトへの発がん性と多様な毒性2
http://gm-chubu.sakura.ne.jp/kimurakuroda-02.pdf

海と陸の地球化学図
https://gbank.gsj.jp/geochemmap/

過去記事
除草剤は安全?
https://josouzaigoenryokudasai.ti-da.net/e11559502.html

過去記事
ヒジキとグリホサート 除草剤にまつわる
https://josouzaigoenryokudasai.ti-da.net/e11654603.html



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この記事へのコメント
グルサホートが発がん物質であると証明されてません。
米国の裁判で原告が勝訴しましたが因果関係を証明されてるわけでもありません。
主張した科学者、反論する科学者の考察をしているサイトを紹介します。
https://agrifact.jp/glyphosate-explanation-seneff-argument1/
信じないかもしれませんがね。
Posted by もち at 2021年10月09日 17:00
はじめまして、もちさん
ロクにアクセスもない弱小ブログに、お越し戴きありがとうございます。
サイトもご紹介していただきありがとうございます。こちらのサイトは私も時々見ています。

しかし、今回の私の記事はラウンドアップの発がん性には一切触れていませんし、サイトの紹介のみの書き込みなのでスパム書き込みに思えてしまい、あまりレスを書く気になれませんでした。・・・違っていたら申し訳ありません。
もしも、もちさんがもっとグリホサートやラウンドアップについて詳しく知りたいと思われたなら、木村黒田純子「除草剤グリホサート/「ラウンドアップ」のヒトへの発がん性と多様な毒性」を是非お読みください。

除草剤グリホサート/「ラウンドアップ」のヒトへの発がん性と多様な毒性(上)
https://environmental-neuroscience.info/free_paper/Kagaku_201910_Kimura-Kuroda_correction.pdf
除草剤グリホサート/「ラウンドアップ」のヒトへの発がん性と多様な毒性(下)
https://environmental-neuroscience.info/free_paper/Kagaku_201911_Kimura-Kuroda.pdf


もちさんのコメントを見て発がん性は証明されていないのか!と思われた方もいらっしゃるかもしれないので、いちおう書かせていただきますと、発がん性がないことも証明されていません。いつかは科学的に安全性が証明される日が来るかもしれませんが、それより先にグリホサート系除草剤がなくなる気がします。

2年くらい前の話ですが、バイエル社は50億ユーロ使って、ラウンドアップに変わる製品を研究しているようですし、最近の話では2022年でアメリカの家庭用ラウンドアップの販売を終了するようです。

ラウンドアップやグリホサートの安全性を主張される方は、どれもリスク評価に基づき少量だから安全という結果に終始しており、「発がん性があるのかないのか?」というハザード評価の論点に対して「どれくらいの量なら安全かどうか?」というリスク評価による観点で、回答になっていないケースばかりです。
リスク評価とハザード評価の違いも説明せずに、安全性や科学的根拠と言われても、むしろ余計怪しく思えてしまいます。

農薬の危険性は主成分(グリホサート)のみで判断されることや、臨床試験がないこと、添加剤との相乗効果で毒性が上がること、企業秘密により何が入っているか分からないこと、安全係数はヒトの個人差は10倍で評価されていることなど、さまざまな課題があり農薬が安全というにはまだまだ不明な点が沢山あると思います。
Posted by やまさにやまさに at 2021年10月12日 09:54
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